オオカミは、

いつものように森の中を散歩していました。

すると、春の柔らかい光の中で

小さな黄色いチョウを見かけました。

 

それは今までに見たことのない、

きれいで可愛いチョウでした。

上へ下へヒラヒラと葉っぱや枝を通り抜けていきます。

 

オオカミはすっかり心を奪われて、

スキップをしたり、くるっと回ったりしながら、

その小さな黄色いチョウを追いかけました。

 

そのうちにオオカミは森の出口のところまで来ていました。

川を渡れば、みんなが暮らす街はすぐそこです。

オオカミはみんなが自分のことを

好きじゃないことは知っていたので

森から出て行くとこは滅多にありません。

 

でもその日はチョウを追いかけるのに夢中で、楽しくて、

そんなことはすっかり忘れていました。

 

川に水を飲みにきていたカエルくんが

森を出ていくオオカミを心配そうに見ていました。

オオカミは橋を渡ってモグラの原っぱを越え、

ウサギの穴の前を通り過ぎ、キツネの親子にも気づかず、

黄色いチョウのヒラヒラに合わせて

フサフサの尻尾を揺らしながら

丘をかけ降りていきました。

 

しばらくすると小さな黄色いチョウは

花壇のスミレの花にとまりました。

オオカミはそっとしゃがみこんで、

チョウに声をかけようとしました。

「こんには、はじめまして」

 

チョウはあっという間に逃げいて行ってしまいました。

「驚かせてしまったかなぁ、

とてもすてきだねって伝えたかったな。」

 

オオカミはそのときはじめて、

自分が森を出て街まで来てしまったことに気がつきました。

しかもそこは誰かの家のお庭でした。

 

縄でしばったワラをつなぎ合わせて作った、小さい家でした。

ふと見上げると、まどから誰かがこちらをじっと見ています。

 

それは赤いスカーフを首に巻いた子ブタさんでした。

 

つづく

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